124. 口戯

投稿者: ゆきお

会話の途中で二人の間に性的な昂りが生まれてきた。
ただしどのような具体的な会話が昂りのきっかけになったのか、私にはっきりとは分からなかった。
「よし美さんのことを話しているうちに」とだけ絵里は答えた。
そして、自分がというよりも、話している途中に小野寺のほうが性的興奮を見せてきたのだと言った。

活発になった小野寺の愛撫のため、会話は途切れがちとなった。
小野寺が絵里の手を自分の股間に誘導し、誘導されるままに、小野寺のものを愛撫した。
「手を持って行かされて、包むように触っていただけ。」というのが絵里の最初の表現である。

すでに固くなっていた小野寺のがますます熱く大きくなった。
しばらくすると興奮を抑えきれないというように小野寺は体を起した。

「これから、フェラチオしてもらいます」

促され、ベッドの上で上半身を体を起した小野寺の足元に移動し体を屈めて、すでにいきり立った小野寺のペニスを口に含んだ。
「言われたようにフェラチオを始めたの。」というなんともドライな表現を絵里は使った。
始めるまでに逡巡や葛藤があったのか、そうした心の動きについては、私が何度かやんわりと言葉を誘導したが、語りたくないようだった。

心の動きに関していえば、小野寺からもたらされたある種の心理的な面について語ってくれた。

「絵里さん、フェラチオにはそれぞれテーマがあることを意識してください。」

「…」
黙って顔を上げた。

「中断しないで、先を続けながら聞いてください。」

「このフェラチオのテーマは感謝とおねだりです。先ほど2度も大きくいかせくれたものに感謝を捧げてください。そしてそのお感謝の礼がうまくいき、それがもうまた十分に元気になれば、もう一度自分を喜ばせてくれるかもしれない。その意味のでのおねだりです。その期待の気持を込めてみてください。」

子供じみて見えすいた誘導だ思ったが、「感謝とおねだり」という言葉が一度頭にこびりつくと頭から追い出すことはできなくなった。
顔を埋めた孤独な作業に入ると、その言葉が頭の中でどんどんと大きくなった。

「フェラチオってね、たとえば他の事を考えながらもやろうと思えばできるのよ。そうなんだけど、でも、自分が今やっていること、口の感覚や口の中にあるものへの意識を追い出すこともできない。何て言っても目の前にあるのはそれだけでしょ。そして、そのうち自分の世界がそこだけになっちゃうのね…」
小野寺の言葉を本気にしたかという質問に、絵里は、間接的にそのように答えた。

「したがって舌の遣いかたも、感謝とおねだりの気分を反映したものとなる。」
そんな暗示をかけらると、自分で否定しようと思っても、いや否定しようと思えば逆に自分の動きを意識せざるを得なくなる。

「まあまずは、好きにやってみてください。指示が必要なときは徐々に出していきます。」
小野寺にそう言われると逆に途方にくれる。

この先小野寺はいつまでどのように続けさせるのか。
当てもなくいつもの自分のやりかたでフェラチオを続けていた。

しばらくして小野寺が情感的な反応を示しはじめた。
指示は特にないが、ときどき褒め言葉とともに頭を撫でられ、そのことによってどのようなにすれば相手が喜ぶのかがだんだん分かってきた。
そのような状況に置かれると反射的に上手にやろうとするのが人間の心理だと、絵里は言った。
そうだろうと私も思う。

口の戯れと心の戯れに没頭させられていった。

突然サイドボードの上の携帯の振動音が聞こえた。
この状況ではけたたましく震えたというように感じられた。
振動だけでもギクリとしたが、2度、3度と鳴ったときに、登録してある私からの着信のパターンであることに気がついた。

胸が早鐘のようになった。
そのままやり過すべきか。
7度、8度と鳴っていくのがまるで永遠に続くように感じられた。

ちょっとしたパニックになった。
耐えられなくなって顔上げ、小野寺のほうを見た。