195. 第3週

月曜日がやってきていつものような二人の日常が始まった。
始まるはずだった。

月曜の夜にはしかし、その水面に小さな石が投げ掛けられ波紋となった。

「木曜?」

「そう、木曜の午後会社から行って、金曜の夕方には戻る」

「必要なの? それ」

「パイロットプロジェクトがちゃんと始動しはじめたし、私もこっちのエンジニアもちゃんと現場を見て、運用を把握しておく必要がある。それきみにどうこう説明するまでもないと思うけど。家明けるのはそれは悪いと思ってるけど、でも分かるでしょ。泊りがけの出張は初めてのことでも、そんなに珍しいことじゃないでしょ」

「…」

絵里にそんなふうに言われると、まるで自分が聞き分けのない子どもになってしまったような気にさせられる。

が、小野寺のことが気なならないわけはない。

「…会うんだろ」

「それは発注側のトップだからね」

おそろしくそっけない事務的な口調に自分でも気がついたのか、少しなだめるような表情でことばが継がれた。

「ねえ、それとこれとは別。わかってちょうだい」

「ああ…」

それ以上の懸念について語ることを封じられる形となった。
そして、私の頭にはそれがもたらす一つの冷徹な事実と、それから発展する想像が、絵里に直接ぶつけられないままこびりついた。

前回のプレイ以来、これで、毎週なんらかの形で顔を会わせて3週目となることとなる。そして出張の次の週にはまたプレイが巡ってくる。

セックスのなかったという前回のプレイの後、告別式のときはともかく、接待だったという金曜日は、ほんとうに儀礼的な仕事上の接触だけの機会に終ったのか。
二人だけで、プレイなりなんらかの性的交渉なりが行なわれたかについては、可能性としての疑惑にとどまるが、もしそれが事実でなかったとしても、いや、まさにそれ事実でなければそれゆえにいっそう、何か精神的なところで絵里と小野寺の間に繋がりができていくように思えた。

それに二人はどのくらいの頻度で、メールなり電話なりで連絡をとりあっているのだろうか。
私には知るよしもない。