12. ビジネスウーマン

投稿者: ゆきお

翌朝、私は朝食の仕度をしながら、絵里がシャワーから戻り、出勤の身支度をするのを待っていた。

食事の仕度がおわりテーブルで先にコーヒーをすすりながら、昨晩の寝室でのセックスを思い出していた。
少しアルコールが入っていたけど、そのぶん二人とも我を忘れていつになく激しく燃えた。
絵里の花芯に手をやると、最近になく、早くからぐっしょりと濡れていた。
それが、あの会話のせいなのか、それとも一般的なじゃれあいの中からなのか、ふと思ったけど、そんなことを考える余裕は欲望にせいた心にはなかった。

いつもより力強い抽送を下半身に受けながら、絵里は背中に力強くしがみつき、何度も何度も体をこわばらせながら、激しい声をあげてイった。
二人ともいろいろな体位をためしたこともあったけど、それは、二人にとって、いちばん一体感を感じる達しかた、いちばん充実感をもたらしてくれる達しかただった。

出勤の仕度を終えて出てきた絵里を、私は、うっとりと見た。

平均的な中背がどこにも隙のない、白いブラウスにパンスーツにつつまれると実際の身長よりも大きく見えた。
ヒールを穿けばなおのことだ。
学生時代からずっと変らない肩までのストレートの髪。
それが、美人の条件といっていい卵形の顔をつつんでいた。
タレントのような美人というわけではないが、知的に整然としたどちらかというと男性的な鼻と頬をもつ顔つきに、大きくよく笑う口と、両脇のえくぼが女性らしさをそえていた。
つやのある肌によくのった化粧。
結婚してから一回り大きくなり、まだ衰えることのないCカップの胸は、きれいにフィットするブラに持ち上げられてブラウスの下で実際よりも膨らみを際だたせていた。

ほんとうをいうと、つきあい出した当時、絵里がこんなふうに魅惑的な女性になるとは思っていなかった。
学生時代は化粧気がなく、服装もジーンズとシャツが多く、体つきも顔つきもととのってはいるが、やぼったい感じがした。

それが勤め出し、仕事のポジションがあがっていくにつれ、みるみる洗練されていき、同時に女らしい柔らかさも出てきた。
結婚していちだん女らしくなったなどと、まわりの人から言われると誇らしさを感じたものだ。

「何、じろじろ見てるの?」

絵里の声にはっとした。

「ん、朝早くからこんな完璧な仕度ができると思って。」

「そうよ、女ってたいへんなのよ。あら、もうこんな時間。」

絵里は、昨夜の、ほろ酔いかげんの柔らかさ、そしてセックスのときの乱れようとうってかわったビジネスウーマンの顔つきできびきびと動いた。
そして、いつものようにゆったりとコーヒーを飲んでいる私のほおを両手ではさむと、音をたててキスをし、じゃあね、と言ってドアへそそくさと向った。

ドアの前でコートを取りいく背中を追い、パンツスーツにつつまれた左右の丸いヒップが上下に動くのをみとれていた。

自分の妻の、魅力的な肢体にあらためて気がつくと、私は、前日の「他の男との…」という会話の意図を、考えるともなしに、しばらく反芻した。

浮気しているんだろうか?

もちろん、そう聞いたって、うんというわけない。

「誘われたらエッチしてもいいかなとか、エッチすることになるのかなとかは考える…」

誘惑が多いのは確かだろう。
そのときどきで、そういうことを考えるんだろうか。

「あくまでも可能性の問題として考えるのね。」

応じる可能性もあったのだろうか。

そうつっこむ寸前で、昨日は結局、上手な会話の持っていきかたにごまかされる形になった。

そういえばビジネウーマンとして彼女がスキルを身につけていけばいくほど、もともと知的なゲームの要素の強かった私たちの会話は、率直な本音のぶつけあいというより、そうしたさぐりあいの要素が強くなってきている気がする。

しかし、最近になって特に何かが変わったとか、浮気の兆候はない。

「あくまでも可能性の問題か」

そんなふうに思いながら、疑惑に頭を使うのをシャットアウトした。