16. 特殊な条件

投稿者: ゆきお

「じゃあその男に6回嵌められちゃうのか。」

わざと露骨な言葉を使った私に返ってきた説明は、また最初の想像を越えるものだった。

「あのね、そういうのともちょっと違うの。ちょっと特殊なのね。」

「特殊って何さ。」

「その人、趣味があってね。」

「趣味って?」
趣味と聞いていやな予感がした。

「SMの趣味があるの。」

「ほう。」
やっぱり。

「Sなのよ…」

「つまりそいつがS、絵里がMのSMプレー、それを6回ぶんってことなんだな。」

「そういうこと。」

返す言葉を失ったまま私の頭の中にかつての妄想がぐるぐる渦巻いていた。
SMの小説や、画像を動画を見ながら、よく絵里をそれに重ねたりしたものだ。
SMプレーで絵里をいたぶってやる、今でも周期的にその妄想は巡ってくる。

それが、絵里自身が、引き換え条件はどうあれ、自ら進んで別の男とそうしたプレーをしようと言っているのだ。

そんな想いで言葉を失っている私に絵里がまた話をはじめた。

「あのね、私、普通に寝るんじゃなくてSMだから、まだいいかって気がしたの。」

「ん? SMのほうに興味があるってことかい?」

「そうじゃなくて、普通に寝るのってはの愛の行為でしょ。」

「愛してなくてもできるけどな、現に絵里が考えているみたいに。」

「そうなんだけど、結局はメイク・ラブっていうことじゃない。」

「で、それで?」

「SMは、ね、どっちかっていうと受けるほうには試練って感じ。」

「ふむ。」

「一人の人とね、ずっとベッドで添い寝してセックスするよりも、ほら、縛られたり、いろんなことで責められたりするほうが、なんか浮気の罪悪感が少ないかもって、そんなふうに考えちゃったの。」

「SMプレーだって、だいたいは結局嵌めちゃうんだぞ。」

「でも、それ以外の部分が主っていう感じよね。愛を交しあうというよりは。」

「まあ、そうかもしれないけど。」

「でね、私、試練に耐えられそうな気がしたの。」

「絵里、どんなことされるのか知ってるのか。そいつに聞いたのか?」

「聞くというより、その人がしたプレーの写真というのを見せてもらった。」

「どんなことしてた?」

「ん、とね…」

急に絵里の饒舌が止まった。
恥かしがっているのか。

「縄で縛られてた?」

「縛られてた。」

「釣られてた?」

「そういうのもあった。」

「鞭とかも。」

「あった。」

「じゃあ SMプレーの定番メニューのだいたいのことはするんだな。」

「そうみたい。」

「写真3、4枚くらいしかなかったけど。」

「前に二人で画像や動画とか見たよな。」

「きみが面白がって見せたから。」

「ああいうふうにやるんだぞ。」

「そうね…」

「蝋燭もあった?」

「写真にはなかった。」

「やるかもな。」

「そうね…」

「浣腸とかもされるんだぞ。」

「そうなのかな…」

「そうだな、きっと。」

そんな会話を交しているうちに、絵里の口数が少くなりうつむき加減になった。
瞳がうるんでいるように見えた。
刺激されてる! と直感した。

私もその会話にひどく興奮していた。

帰ってきた最初のときのように、隣に座っていれば抱き寄せて、濡れているかどうか確認できるのに…と思いながら、正面の絵里をみつめ、どうしようかと思った瞬間、絵里が、「私、寝る仕度してくる。まだ化粧も落してないわ。」そう言って、すっと立った。

確かに絵里はずっと帰ったままの服で、座ったっきり今まで話をしていた。

シャワーをあびる気配に、帰宅したときの習慣ではあるけれど、濡れているのをごまかそうとしたのか? とか、シャワーを浴びながら自分で触るのだろうか? などと想像した。

時計を見ると10時半を回っていた。
夜の時間はまだある、と思った。