23. 決断の朝

投稿者: ゆきお

翌朝、いつもの目覚ましより早く自然に目が覚めた。

誘眠剤のおかげで熟睡し、夢を見ることすらなかった。
もし飲んでおかなければ、一晩中、さまざまな思いや妄想に苛まされただろう、そしてそれは、私の精神状態や判断力によい影響を与えなかっただろうと思うと、絵里の判断は正しかった。

昨晩、あのあとベッドに入ると、自然に抱き合った。
これまでの会話、その重みを忘れて、体による甘い接触が欲しかった。
彼女も同じだったろう。

一旦休む体勢になると、彼女の背中に密着しながら、顔を向けさせ長いキスをした。
胸を揉むと、彼女はすでにぐったりした体でそれに反応した。
秘部に手をやった。
ベッドの中での愛撫の後のそれ相応の程よい湿り気を感じたが、軽く予想していたように、それ以前の会話に刺激されてぐしょぐしょになっているような気配は感じられなかった。
やや期待を裏切られたような気持になったが、やはりあれだけの会話は、性的な刺激よりも精神的負担を与えたのだと思った。

それは私にしてもそうで、途中、話から受ける想像の刺激で股間が硬くなったこともあったが、会話の間じゅう勃起しっぱなしということはなく、むしろそれは、性的興奮と意気消沈、不安感の入り混った中途半端な気持を与えていた。
中途半端な気持で彼女の花芯を愛撫していると、それに応えながらも、彼女は私の手を押し止めるように掴んで言った、

「今日はダメ。もう眠ろう。疲れたから。」

私自身このままセックスに持ち込む決心も最初からついていなかったので、おとなしく手を引く。

「でも触っていて」

絵里は甘えた声で言った。

絵里の胸をゆったり愛撫しているうちに、誘眠剤がきいてくる気配を感じ、二人ともそのまま眠り落ちて行った。

そんなことを思い出しながら、まだぼうっとした頭で隣に寝ている絵里の顔を見た。
昨日の話などなかったように、無邪気にぐっすりと眠っていた。
その事実に軽い嫉妬心を覚えたが、よほど疲れていたんだろう、目覚しが鳴るまで寝かせてあげようと思い、起き出して朝食の仕度をすることにした。

目覚ましがなってしばらくして絵里はいったんキッチンに顔を出し、私に軽くキスすると、シャワーを浴びに行った。
いつ焼いてもいいようにトーストのセットだけし、一人先にコーヒーをすすると、私は昨日の話を先送りするかのように、台所のテーブルに置いた自分のPCで、ニュースの類をあれこれと読むともなしに見ていた。

絵里が身支度をする気配を見計らって、トーストを焼き、ヨーグルトを用意し、カフェオレを入れる。

急いでいるときは、ほとんど立ったままで朝食をとり、慌ただしく出ていくときもあるのに、今日はテーブルにきちんと座った。

おたがい無理したような微笑みで見つめあう。

私の視線は、ウールのセーターに柔らかく包まれ浮き立たせられた胸に移っていった。

それに気づいたように絵里は目をとじぎみに俯く。

お互い口数少なく、朝食をとる。

絵里が、「あのね…」と言いかけるのをさえ切るように、私からしゃべった。

「昨日の話さ、君が出てから一人でゆっくり考えるよ。ところで何時までに返事すればいいんだい。」

「4時。」

「分かった。」

そのまま何ごともなかったように、私が先ほどネットで見たニュースの話をしながら、朝食をとった。

出かける時間だ。

ドアのところまで送ると、向こうから軽くキスしながら

「愛してる。」

とささやくように言い、ドアを閉めて出て行った。