30. 「SMプレイ契約書」

投稿者: ゆきお

「SMプレイ契約書」… その文字はあまりに生々しかった。

不意打ちをくらったような形になった。
キッチンのテーブルに座ると、あれこれ考える余裕もなく、胸の動悸を懸命に抑えながら表紙をめくり、3枚にわたって印刷された契約書に目を通した。

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SMプレイ契約書

小野寺武(以下甲)と浅田絵里(以下乙)は両者間で行われるSMプレイ(以下プレイ)に関する条件を定めるため、両者の自由意思に基きSMプレイ契約書(以下本契約書)を締結する。

第1条 契約期間
 平成××年1月××日より同年6月××日まで。

第2条 プレイの回数・日程
 1)回数および日程
  甲と乙は契約開始から終了までの期間、以下の日程で6回のプレイを行う。
   1月××(土)-××日(日)、2月××(土)-××日(日)、3月(土)××-××日(日)
   4月××(土)-××日(日)、5月××(土)-××日(日)、6月(土)××-××日(日)
 2) 上記の日程でプレイが実行困難になった場合、或いは、不測の事態により実行がキャンセルされた際には、振り替え日を設けることができる。その他、状況により、若干数の増減について報酬についての話し合いとともに協議することができる。

第3条 プレイの場所
 A市内、あるいはその郊外のあらかじめ甲が指定するホテル。

第4条 プレイ時間(実プレイ時間とプレイ日拘束時間)
 (1) プレイ日の拘束時間は乙がA市○○空港に到着した時間から、翌日同空港を出発するまでの時間と定義し、最低24時間を定める。
 (2)乙の到着は遅くとも17時以前とする。
 (3) 到着、出発時間の計算は、航空会社の定めた運行予定時間による。到着時間の遅延が3時間を越えないかぎり、実拘束時間が24時間を下回った場合も格別の調整は行わない。
 (4) 3時間を超える航空便の遅延、欠航、あるいは乙の責に帰す遅延の際には、拘束時間の24時間の保証の原則に鑑み、時間の調整を協議することができる。
 (5)乙は甲に対し移動に用いる航空便を4週間前までに申告しなければならない(2回目以降)。
 (6) 実プレイ時間は、プレイ場所に予め指定されたホテルに乙が滞在する時間と定義する。
 (7) 実プレイ時間、実プレイ時間外のプレイ日拘束時間内における順守事項については附則により細則を定める。

第5条 報酬
 (1)プレイの実行により甲は乙に報酬を支払う。
 (2) 甲が乙に支払う報酬は、乙が甲に要求する便宜供与をもって代えることができる。
 (3) 報酬の詳細は別途定める。

第6条 プレイの内容、注意事項。
 (1) 通念上SMプレイと解されるものであって、甲が加虐者、乙が被虐者の役割を担う。
 (2) 甲は乙が肉体的、社会的な危険にさらされることがないよう十分に配慮する。
 (3) 乙はSMプレイにおける被虐者の役割にふさわしい態度で甲の指揮・命令に従う。
 (4) 実行に係る個々の留意事項、禁止事項については附則により細則を定める。

第7条 必要経費
 乙が羽田空港を出発してから、到着するまでの交通費、滞在費、食費、その他必要な経費は全額、甲がこれを負担する。甲は、乙の予定の申告に基き航空券の予約、支払いを出発時までに済ませておかなければならない。

第8条 秘密保持等
 (1)本契約の存在、プレイを行なっている事実を第三者に開示してはならない。
 (2)秘密保持のための細則についてはさらに附則で定める。
 (3)契約の実行にあたり、甲も乙も、相手方に著しく信義を損なうような行為があった場合は、前項に拘わらず、本契約の存在を自己の責任において第三者に開示することができる。開示の行為に伴い被る社会的不利益についていずれの側も賠償を請求してはならない。

第9条 契約の終了、延長、および解消。
 (1)本契約は期間の満了に伴い、意思の表明に拘わらず、自動的に効力を失なう。契約の延長・更新は認めない。
 (2) 両者のいずれかの提案に基づく協議により、契約期間中に契約を解消することはできる。その際、報酬の支払いの中断について異議を唱えること、すでに支払われた報酬の返還を求めることはできない。

第10条 信義誠実
 本契約に定めがない事項については当事者は互いに協議のうえ、信義に従い誠実に解決に向けて努める。

別紙 1通 附則 – プレイに関する細則、禁止事項、提出書類等

本契約の締結を証するため、本契約書2通を作成し、甲乙署名の上、各自1通を保持する。

平成○○年1月○○日

        甲 小野寺武        乙 浅田絵里

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これで、終りではなかった。
契約書に書かれているとおり付録があり、それは別にクリップで閉じられていた。

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