60. 革と鞭

投稿者: ゆきお

絵里はまず、今回は縄は登場せず、革の拘束具が用意されていて、それが主に使われたことを説明した。

それは数種類あった。
全身に菱形にからみついて食い込むような細革のボンデージスーツ。
乳房を絞り出すように穴の空いた革のブラ。
首輪。
手首、足首を拘束するベルト。
手首、足首の物に似た、胴周りと、腿をに巻き付く太めのベルト。
ボールの付いた箝口具。

そのようなものである。
全身用のものとブラはオーダーメードだった絵里は話した。

そして、その用意のために、第1回目のとき小野寺に全身を採寸されたことを絵里は、このときにはじめて言った。
これも、私にとってちくりとくる、最初に話されなかった曖昧な部分に属する。
確かに私はこのことに思い至らなかったし、話の流れの中で出てこずじまいでもおかしくなかったのだが。
話さなかった理由について、「私も、そのときは意味が分からなったし…。なんだか子供じみた遊びだとしか思わなかったから、話すほどのことでもないと思ったのよ。」と答えられてみれば、それまでだが、やはり何か小さな裏切りのようなものを感じないではいられなかった。

私たちは、それらのものを名指しするための適切な語彙がなかったから、たとえば、ボンデージスーツに関しては、絵里はこんな感じと、自分の体を指でなぞって説明してくれた。
私はそれを視覚的には、かつて見たSMの画像や動画を思い出して想像したり、あとで独りになったときにネットでいろいろ探して確認してみようとした。

もっと絵里に確かめたい気持はあったのだが、ずっと以前とききどきやっていたように居間で二人でネットを見たりはしなかったし、ベッドルームにPCを持ち込むこともしなかった。

私たちの千夜一夜の語りは、ずっとベッドの中に限られており、居間でその話を始めることはなかった。
気分がのったときの居間でのキスや愛撫の行為は、そのことと切り離して行なわれ、ベッドルームに行き、語りを始めるための合図でしかなかった。
そこには明らかに「そのこと」を夜の寝室の中だけにとどめておきたいという二人の意識が暗黙のうちに働いていた。

ネットで似た物を探してどんなものか教えてくれないか?という私の何度かの頼みに対し、ベッドの中で絵里は生返事で約束させられたが、結局、それは先送りになるだけで実現しなかった。
しばらく後になって絵里が告白したことには、いちおうそのつもりでネットは見たという。しかし、検索すると当然のように実際に女性がそれが使われている画像を見ていると、とても検索を続ける気分にはなれなかったと絵里は説明した。
考えてみれば私の要求は、夜の寝室だけにという暗黙の了解を自分の好奇心のために、絵里に対して破れというものだったことになる。

夜の語りは段々淫靡なものになって行き、前になかったプレイの要素が語られた。

首輪、腕輪、足輪とボンデージスーツを装着し、半ば吊られた状態で、おもに剥き出しになった尻がバラ鞭で打たれた。
前回のように鋭い痛みや、肌に食い刺さるような痛みを伴うほど強い鞭打ちはなかった。
その代わり、小休止や、リズムの変化を伴いながら、執拗に長かったという。
小休止のあとの途中から、乳首にクリップが挟まれ、その状態でまた尻を打たれた。
されている絵里自身が驚くほど、意識が乳首の痛みと臀部の痛みのいずれか一方に偏ることがないように、痛みの与えかたに調節が加えられていたという。

後のほうで、体の前面が打たれ腿と腹に鞭が入り、これは尻のときとは比べものにならないくらい飛び上がるほど痛かったが、軽く試して打つのも含め6打ほどで済んだ。そして胸を打たれずに済んだと、絵里は今でも思い出すと身がすくむという調子で語った。

鞭打ちによって感じたか? という質問に絵里は躊躇いながらも肯定的に答た。
しかしながら、どちらかというと、この話題になると寡黙ぎみになった。
このときの感覚について絵里から聞き出すことができたのは、2回目のあとの夜の語りでももう少し日が進んでからで、絵里は、次の話題に移ることを好み、そうしむけた。

鞭打ちのあと、前面を打たれたショックにおののく絵里は、吊りから解かれ、ソファで少し小休止させられた。