62. タイムギャップ

投稿者: ゆきお

のべ10日あまりかけて、ひととおりの絵里の話は終った。
細部をまじえての語りを聞いている間は長い道筋に感じたが、次の昼間になって改めて考えると、あっけなく終ったように感じた。
そして、行なわれたことはわりに単純だと思い直した。

革の拘束具を装着され吊った形でばら鞭で打たれ、床に2度姿勢を変えて、次は椅子に拘束され、全身を乗馬鞭で愛撫されたり、軽く打たれたり、ディルドや指によって刺激されていかされ、男のもので3度に分けて犯され2度いかされ、1度の射精があった。

前回縄で行ったことに革の拘束具が加わり、拘束の形が追加された。
鞭が小道具として全体的にやや重要な役割を果した。
ただ泣き叫ぶような激しい鞭打ちがあったわけではない。
クライマックスは前回と同じパターンを辿っていた。

具体的にプレイと名づけられる行為のパターンは限られていた。
ディルドは用いられたが、それはAVで必ず登場してくるようなバイブですらなかった。

考えてみれば、自分のパートナーに行なわれたこととしては、ほんとうは異常なことだ。
しかし、2回のプレーを経て、それぞれについての詳細な語り、そして私自身の妄想や、昼間何度も目にするAVになぞらえたイメージによって、だんだんその異常さに慣れつつあった。

思ったよりも単純だったことについて、私はそのときそれに安心したのか、それとも別のふうに感じたのか自分でもよく分からない。
ただ、何か直感的に解せないという感じがあった。

次の夜に、私は「これで、この前のプレーは全部?」と尋ねた。

「そうよ。どういうこと?」

「いや、他にも何かなかったのかな…て。」

「他にも私がいろいろされることを期待してたの?」

「そういうわけじゃなくて。」

「じゃあ、何?」

「ん…」

「もしかして他にしたことを隠してるって、疑ってる?」

「いや、そうじゃないよ。」

「ん…5時間もあったんだよね。」

「あ、そういう意味。そうよ。でも休んだり何かしてると5時間なんてあっという間。私だって5時間経ってるって、帰ろうとするときになってはじめて気づいたんだもの。」

「なるほどね。そうなんだね。なにせ未経験者だから…」

絵里がプレイとして行なわれたものについて隠したものはないだろうとその時思ったし、今でもそう思う。

前にも書いたように、私は1、2時間の間にさまざまなものが詰め込まれている一般的なAVのビデオのイメージでしかSMプレイを知らなかった。

私が第1回めの語りのときからすでに、漠然ととらえられないと感じていた、プレイとプレイの間の輪郭の曖昧なものの存在があった。
そしてまた、実践的には一つ一つのプレイはもっと時間がかかるということについて、私はイメージが不足していた。

ただ、それにしても、小野寺は、明らかにこのとき少ない種類のプレイを異例なほどゆっくりと時間かけて行っていたと今でも思う。
ただ、実践的なプレーそのものを知らない私は、その異例さの意味についても考えが及ばなかった。

私は自分が思っている時間と5時間の間にあるその時間差に、何か別のプレイが行われたかもしれないと心配するよりも、そこの部分のもっと深い意味について理解するべきだった。
ただ、輪郭の曖昧な部分とともに、何か解せないものがあると漠然と感じていただけだった。

いや、理解してからといって何になったろう。