89. 手

投稿者: ゆきお

明らさまな反応の弱い体をどうにかしようとしばらく抽送に専念する余り気がつかなかったが、ふと目を絵里の頭のほうにやると、今まで枕を抱えていた両手がまっすぐ上に延びている。

延ばした腕はベットの背凭れに阻まれ、上腕をそのままそこで垂直に掲げるような形になっている。
その先で両手が一つにしっかり組まれている。
まるで祈るような格好だが、何に祈っているのか。

私のだんだん激しくなる抽送に、絵里の口からは相変らず声を殺した反応だけが漏れ聞こえる。

「ん…んっ、ん…っ、ん…んっ」

まるでそれ以外の声はないかのように。

今まで絵里はこういうとき、口を大きく開けた明からさまな歓びの声を上げ、最後は手放しの反応を見せていた — 「ああん 、あっ、あっ。ああん、ああん、ああん…」

今日どうしたことか。
最初枕に顔を埋めていることから来るものかと思ったら、顔を横にして口が枕についていないときでも、相変らず口は固く閉じ、声と息は鼻から漏れてくる。

「んっ、んっ…んっ、ん…っ、ん…んっ」

その絵里の声を聞きながら、小さな疑いがどんどん大きなものになり、たちまちのうちに確信になった。

快楽の噴出を堰き止めるように固く閉じられた口から漏れ出てくるその声に聞き覚えがあった。
Y美がビデオの中で、半吊りになった立ったまま犯されているときの声そのものだ。

同時に絵里の両手は祈りを表す形のものではないということにも気がついた。

画面の中のY美、その絶頂の様子を思い浮べると異常な興奮に捉えられ、同時に私の腰の動きも暴力的なほど激しいものになった。

絶頂を目指す動きを感じたのだろう。
膣が大きく膨らみ、貪欲に迎え入れるような反応がさらに強まった。

組んだ手がますます強く組み合わされ、ぶるぶると震えている。
腹の底から湧き上ってくる息と、それが声になるのを激しい力で堰き止める力の拮抗が耐えがたいものになり、それでも声にならない声が漏れてくる。

叫びにならない叫びが腹のほうに押しもどされるたびに、私のペニスを当たっている子宮が下りるように動く。

そこをなおも突いていく。
そして、

「ん… ん、ん、ん、ん…ん、ん、ん…」

という声とともに、絵里の体が激しく痙攣した。

それに合せて私も絵里の奥に激しく精を放った。

しだいに耐えがたくなってくるエネルギーを内に抱えたたまま、外側に向かって一度も爆発することなく、内側に爆発するような絶頂を絵里が迎え、そしてそのエネルギーの渦巻きがなおも絵里の体を支配しているのを、彼女のまさにその部分と繋がりながら感じた。

絶頂の後の膣の、ひくっ、ひくっと締めつけるような動きが、いつもより奥深くから、そして膣全体で起きているのを感じた。
それはいつもより長く、尾を弾くように続いた。
それがおさまりかけると今度は、同じリズムで全身がおこりのように動き、また奥のしめつけを感じた。
おこりがゆったりしたしゃくりあげるような動きになるまでそれは続いた。

私がこれまで知らない絵里の絶頂の反応だった。

画面の中のY美を頭の隅に思い浮かべながら私が精を絵里の奥に放ったそのとき、絵里は何を思っていただろうか。

1回目のプレイの後の絵里の語りに対し、小野寺とのセックスでいったのかという質問をしたとき、絵里ははぐらかすように答えた。

「きみのことを考えてた。」

その言葉が奇妙な捻れの感覚とともに蘇ってきた。

私はそのときの絵里の言葉に真実が込められたいることを信じた。
そのときの真実を信じれば信じるほど、捻れについての想像は苦いものとなった。