90. 爪

投稿者: ゆきお

やっと絵里の体の痙攣が収まったところで、体を離した。

絵里の体を全体をベッドの足元のほうひっぱってやると、枕に頭をうずめながら、ほどけた両手を頭の上にだらしなく伸ばしたまま正体をなくしたようにしている。

このまま朝まで寝るとよくないと思った。

ベッドサイドのティシュを何枚かとると絵里の股間にあてがってやり、ぐったりとした絵里の体を抱きかかえなが、下の布団をずらして、上に掛けてやろうとした。
そのとき、絵里の足元に視線がとまった。
足の指に真っ赤なペディキュアが塗られている。

時々マニュキュアはもちろん、ペディキュアをしているのは見ているが、これほど真っ赤なのには記憶にない。
行くときもそうだったのだろうか。

その真っ赤なペディキュアは、私の頭に、昨日見た一連の写真を呼び起こさせた。

Y美の記録のサイトで、足首と手首を一つに縛られ左右に開脚して仰向けにされた姿勢で、赤い蝋を胸といい下腹部といい、そして腿の内側といい、素肌に垂らさている一連の写真があった。
その写真の中で、 Y美という女の手の爪も足の爪も真っ赤なエナメルで飾られているが、強い印象に残っていた。
明らかにそのマニュキアとペデキュアは、素肌の真っ赤な蝋に呼応した視覚的効果を狙ったものだと私はそのとき思った。

絵里の手を布団の中に入れてやるとき、その手の爪を一瞬の自分の鼻のところへやった。
かすかにリムーバーのアセトンの匂いがするような気がした。

絵里をベッドの中にきちんと寝かした後、バスルームに行きシャワーを浴びた。
洗面台に向かったとき、その下のゴミ箱が気になった。
後ろめたい気持もしながら、その中をさぐると、丸めたコットンがいくつもあり、開くと、真っ赤なエナメルをリムーヴァーで拭き落としたと思われる跡がそれぞれについていた。

消しても消せない痕跡が、内から外から侵入しはじめているのを感じた。