98. 見せられていないもの

投稿者: ゆきお

絵里の仕事は最初に予想していたとおり土曜も出勤となった。
仕事に加え金曜日が送別会があったので深夜に帰り、土曜の朝一で出ていくという具合であった。

土曜日のスケジュールは同僚の仕事の進捗次第でどうなるか分からないという話だったが、午後に連絡があり、5時には出られるという。
ゆっくり食事する準備をして待った。
私のほうも、すでに、絵里の帰りが遅い金曜夜の時間を利用して、年度末納品の仕事を全て済ませてあった。

日曜は出なくてよいとうことでゆったりと夜を過す余裕ができた。
食事のあと、残ったワインを飲みがら、絵里の会社でのちょっとした愚痴や、4月からの人事の話、私の仕事のことなどを話し夜を過していった。

スケジュールが変らなければ、絵里の3回目のプレイは今ごろのはずだ。
そういう思いが時々胸に巡る。
絵里のほうでも、その思いがあっただろうと思う。
時々なんとなくぎごちなくなる瞬間が二人の間を過る。

それでも、いろいろあった連休開けからの、仕事のストレスの続く1週間がやっと終ったという解放感から、リラックスし、お互い口も軽くなっていた。

その雰囲気の中で、私はY美の話しに水を向けた。

「小野寺から送られてきた写真と秘密ぺージの女の人なんだけどさ、 Y美っていう…」

「ああ、よし美さんね。」

「知ってるの?」

「知らない。この前、話にになって、ちょっとだけ教えてくれたの。名前もその時はじめて聞いた。」

「zipで送ってきた写真って、絵里がプレイ前に見せられものと同じって言ってたよね。」

「そう思う。細かいところまで覚えてないからアングルとかちょっと違う気かもしれないけど、基本的には同じ。」

「前のもそうやって送ってくれたの?」

「前のは小野寺さんのPCにあるのを見せられただけ。だからその時だけの話で、あと覚えてない。」

小野寺とそれに関していつどんな会話になったのか知りたいと思ったし、また先週、Y美のことがどんなふうに小野寺と絵里の間で話題になったのかのほうにも強い興味があったが、今は、そのことにはできるだけ触れずに、とりあえず話題をY美の情報についてだけに絞ろうと思った。

それにしても、zipは絵里のPC経由で送られてきたものだし、パスも絵里が教えてくれたということは、彼女が仕事で使うPCの中、どこか奥深くのフォルダーにあの6枚の画像があることになる。
絵里のことだから、生データではなく鍵のつきのアーカイヴか、自分の設定した隠しフォルダーか何か入れてあるだろうと思うけど、やはり、というか、それだけに、それを想像すると穏やでない心持ちになる。

「ホームページにあった画像や動画だけど…」

「動画もあったの?」

「あったよ。」

「私は見てない。」

「2ページめにあったけど。」

「1ページしかなかったはずだけど…。」

そこでハッと思った。
小野寺とは私と絵里では違うものを見せているのではないか。

「ホームページって、Y美の記録っていうやつだやね。」

「そうよ。」

「絵里がそのページ見たのっていつ。」

「夕方。」

「スライドショーでたくさんあったよね。」

「そう、びっくりした、あんなにたくさんあるなんて。でも1ページしかなかった。」

「じゃあ、2ページめってたぶん僕が見る夜までに加えたんだね。」

「そうかもね…。」

絵里が何か考え込むように言う。
その事実について、絵里はどう思っているのだろうか…。

「動画ってどんなの?」

「んっとね…」

半吊りなって立ったまま、見えない男に背後ろか犯され、声にならない声を上げて達してるY美の姿と、土曜日の絵里の二つのイメージが頭をよぎりどきりとした。

「…たいしたものじゃなかった。写真にあるボンデージのが、ちょっと動いているって感じ。短かかったし」

「ふ…ん。」

絵里はそれを見たいと思っているのだろうか?
絵里はあえてかそれについては何も言わなかったし、こちらも質問しなかった。

絵里が見たとき、2ページ目がなかったということはそこにあった別のものも見ていないということだろう。

「動画って1つだけ? 」

「1つだけ。」

「ほかにもいろんな写真あったの?」

「1ページと同じようなもの。でも、すごいね、あんなに細かくたくさん。」
蝋燭や赤い縄、ランジェリーでの緊縛姿などの画像を思い浮かべながら、それらについて絵里に言わないほうがいいような気が直感的にした。
同時に、絵里と私で違う物を見せている小野寺の意図について不吉なものを感じた。

絵里が見せられていないもの、私だけが見せられたもの、それらのシーンに現われたよし美の姿が頭から離れなくってきた。