115. 背面座位

投稿者: ゆきお

いったん愛撫が止んだ。

期待とともに絶頂へ持ち上げられていた感覚がすうっとあるところへ落ちていった。
恨めしい気持と混乱の極みから解放された安堵が交錯した。
しかし感覚は冷えてはいない。
それどころか熱い何かが体にとじこめられたままだ。

ゆっくりと体を前に傾けさせられた。

肩と頭をシーツにつけ、後ろ手に縛られたまま、腰を上げさせられた。
乳房ごと飛び出している乳首がシーツにあたり、クランプに噛まれた乳首も捩れる。
別種の刺激でそこの痛みが新たに強く感じられた。

その痛みに気をとられている間に、後ろから男のものが貫いてきた。

この状態で貫かれるのは前回すでに経験している。
しかし今までにない異常な感覚だった。
後背位で犯されているのがSMホテルのプレイルームではなくビジネスホテルのベッドだということがただならぬ胸騒ぎを与えた。

外は暗くなりはじめ日の光は入ってこないが、部屋の灯りは赤々とつけられていた。
窓を覗ける位置に別の建物の窓がないことは知っているが、顔を横にやって見えるレースのカーテンの向こうの闇は、視線を按じさせ、それが根拠のない心配だと分っていても怖かった。

抽送がゆっくり続いていく。
抽送を受けている部分が熱くたぎってきた。
シーツに顔をうずめた。
今度は、鏡に写る自分の姿を見ないで済むことにほっとした。
このまま感覚に没頭すれば絶頂に達することができると思った。

そのとき腰が強く引き寄せられた。
小野寺が体を倒し、両手で抱えられた体を無理やり起された。
体位を変えるとき、結合を解かずに行なうとするその動きになぜ協力してしまうのか。
相手が他の人でもそうしてしまうのは、大人のセックスを知ってしまった習い性のようなものね、と絵里は自嘲気味に言った。

足を開きベッドによりかかる小野寺の上に、自分の足を乗せるように開かされた。
両手で後ろから体を支えられて結合する形となった。

「背面座位っていうやつだね。」
そう、私が指摘すると「そう言うのね、あれ。」と、名前などどうでもいいと言うような無関心な調子で絵里は答えた。

私たちの間では、ずっと昔、若くて好奇心盛んだったころに2、3度試したくらいだろうか。
あまり記憶にない。
それを思うと心穏かではなかった。

「絵里さん見てください。」
小野寺の言葉に促されて直視した鏡の中にまた自分の姿があった。

小野寺の指が、確認するように結合部に指を添えると、そこに目がいかないわけにはいかない。

今度は視線を落すよう促され、直接その部分を見た。
淫らすぎる。
そんなふうに結合部を見せられるのはプレイの中で初めてだし、それに、自分の性生活の中でももう何年もないと思った。

小野寺の腰がゆっくり動き出した。

後ろ手に縛られた手を小野寺の腹に置いた体勢は不安定で、結合そのものも浅く不安定で最初は集中できなかったのが、その中に均衡とリズムを感じ出した。
結合が外れそうになるのを体は本能的に嫌う。
男がポジションと動きをうまく操り、それを防いでくれる。
両手が縛られているので、それに頼るしかない。
倒れるのを防いでくれるのも男の手だ。
そうやって、意のままに操られながら、できることは腰の動きでそれに協力することだけだ。

「ほら、こんなに悦んで腰が動いている。声も素敵だ。やはり動画がいいと思います。」
「もしこれが恥かしかったら、ディルドでもいいことにしましょうか。あなたの好きなポーズで撮ってあげましょう。」
「好きなようにディルドを使うといい。」

また屈辱の言葉責め。
男の手が乳房を掴み、乳首に触れると痛みが乳首から結合部へと走る。
そしてそれでまた腰が蠢く。
屈辱の言葉と痛みと快楽…。
それらが渾然一体となってきた。

「欲しそうに腰が動きますね。」
「絵里さん、ほら綺麗だ。」
「淫らで綺麗だ。」
「気に入りましたか。」
「いってみますか。」
「撮って見せてあげますか。」

腰のリズムと矢継早の言葉によって追い詰められてきた。

問いかけの言葉が畳みかけられても、返事できるはずはない。
首を振って反応するしかなかった。
首の動きは否定の意味なのか、それとも与えられる快楽のリズムに反応してのものなのか。

小野寺もしだいに言葉少なくなってきた。
黙々と体だけが動いている。
ベッドの軋む音にまじって、汗ばんだ裸の肉体どうしが触れあう湿った鈍い音がリズミカルに聴こえる。
そして、声を出すまいとしている自分の口から漏れる荒い息。

また絶頂が近くなってきたのを感じた。