117. 正常位

投稿者: ゆきお

「なんでしょう。」と問われても、「体の奥まで深く貫かれる感覚にとまどっている」というようなことを答えられるわけはない。

小野寺はそれを見透かしたように、ゆっくりそして大きく抽送を始めた。
先程までの不安定な背面座位のときと違って、こうして体を折り曲げられ正面から男を迎え入れると、深く確実にお腹の中までえぐらるような感覚がある。

突かれるごとに愉悦が体の奥から湧き上ってくる。

動きがいっそう力強くなってきた。
肩の痛みとは関係なしに体が二つに折り曲げられた姿勢は苦しいが、それにかまっていられないような感覚が体を貫く。

両手をとられ、うながされるように相手の首に手をかけた。

折り曲げた膝の向こうにある男の顔が見下ろしている。
突かれる度に体がいっそう窮屈に折り曲げらる。
その窮屈さと反比例するかのように、下腹部は開き挿入されたものをさらに迎え入れる。
そして男のものの抽送が奥深いところで感じられた。
そのたびごとに自分ではコントロールできない快感が強くなってきた。

今度こそはと思う。
先程から何度絶頂の直前ではぐらかされているだろうか。

男が力強く挑みかかるたびに必死で首に掴みついた。
そうしていないとどうにかなりそうだった。

昇りつめていこうというところでいったん抽送がペースダウンした。
目を開けるとおだやかな目をした男の顔があった。
背中を抱いていた男の手がいったんほどかれると、二つに折り曲げられていた下半身を自由にされた。
完全な屈曲の形を解き、両足を相手の腰の両脇に誘導された。

「これだと肩がまた心配ですから、もうちょっとゆったりしましょう。」

そう言うとまた抽送が再開された。

正常位だが、先程の屈曲の名残で、足を宙に浮かせたまま男のものを迎え入れている形となっている。
この姿勢になって逆に、先ほどのまでの深さを思い出し求めるかのように自分の足が男の動きとともに自然に高く上げられていった。
自分から強く体を折る形となった。
男の首にしがみつき、足を男の背中に回しクロスさせると、そのポジションで安定した。
男の顔が近づきキスを求めてきた。
それに応えた。
先程の屈曲位で近づこうとしても近づけなかった距離が埋まったかのようだった。
深い挿入と体の密着、求め合う口は、これ以上ないという結合感をもたらした。

「今度こそ思いっきりいかせてあげます。」

そう男が言うと体の奥がかっと燃えた。
昇っていく度にそれを中断されていた後の、そんな単純な保証の言葉はゾクリとするほどの力を持った。

抽送は同じような調子なのに、体の反応が自然と強くなった。
声が高く漏れ始めた。

「もうちょっと声を抑えてください。」

そう言うと、声が漏れそうになる自分の口を男の口が塞ぎ、力強いディープキスになった。

私たちのいつものパターンだ。

「きみと同じことをするのよ。」
絵里自らそう言った。

最初のプレイのあとに絵里が言った「きみのことを考えてた」という絵里の言葉を思い出した。
しかし、このとき、私のことを持ち出した絵里の気持をここではどう解釈すればよいのだろうか。

そうやって口を塞がれることで絵里がいっそう燃えることを私は知っている。
もちろん絵里自身も自分のこととして。

唇を吸われたまま、男にしがみついた。
それからほどなくして下腹部に渦巻いたものがはじけ頭の中が真っ白になった。
あっけなく達していた。
最後に昇りつめていく時間の短かさに比べると、男のものを締めつける自分の痙攣を長く感じた。
痙攣がおさまると、宙に上げたまま男の腰をしめつけていた足を、男が解いてベッドの上に下してくれた。

「拘束されずにセックスしたのは初めてだった。」というのは、絵里のコメントだが、私はさらに「普通の男女の正常位…、いや正常位としてもかなり情熱的な正常位だな」とシーンを頭の中で思い描きながら思った。

「正常位」… 英語ではmissionary position。
日本語の文字からすれば異常ではない、あるいは逸脱していないノーマルなセックスの形だということだが、しかし、男と向きあって強く抱き合い情熱的なキスを交しながら達した絵里の行為は、私には縛られ、鞭打たれるものよりも、はるかに正常でないものに感じられた。
私自身がSMプレイのイメージに毒されていたいうことなのか。

それにしても、プレイに応じた絵里のミッションにそれも含まれているということだったのか。