123. 積み重ねられる言葉

投稿者: ゆきお

「一件落着」という言葉には心を刺されたし、ファイルを受け取る私の気持はこの後ずっと気にはなったが、その一方で、とりあえず伝えることは伝えたという安堵感はあったと、絵里は告白した。

思い悩んでもしょうがないと小野寺に促されるままサイトの続きの画像を見ていった。
その中のどの画像が送られたのだろうか、中身を確認しなかったことが悔やまれたが、背後から自分を見守っている男に問い質すのもしゃくだった。
そしてその画像に自分を重ねるだろう私のことが気になった。

見ているうちに過去2回のプレー、そして今晩これから起こるであろうことに、想像が奪われていった。
画像を最後まで見終るころには、性的な高ぶりがまた戻ってきていた。

記録公開同意書なるものにやはり気がついた。
読んでいいかと小野寺に断り、クリックして目を通した。
同意書の内容に軽いショックを受けた。
そのような同意書をやりとりするような男女の仲は理解を越えていた。
そしてその当事者の男が肌を接触して自分の背後にいて、文書を読んでいる自分を見守っている事実に身震いがした。
写真で見る限り、自分がこのY美という女性と同じことをしていることが改めて強く意識された。
そして先ほどまで小野寺によって、女性としてオルガスムを与えられたことも。
自分が通常の日常からすいぶん遠くへ来てしまったことを急に強く感じた。

「よし美のことが気になりますか?」
小野寺からのその言葉にびくりとした。

「よし美さんっておっしゃるんですね。どういう方なんですか…」
その話題には深入りすべきではないと頭の片隅で思いながら、正面から投げかけらた質問に好奇心が抑えられなかった。

肩越しに小野寺の手が延びPCの蓋を閉じると、その手で体を引き寄せられた。

仰向けになったところに、小野寺が側臥したまま腕を乳房に覆い被せるように置いた。
何かのついでの手癖のように胸への愛撫を続けながら小野寺が話し出した。

その後の話は、既に絵里が戻ってきて佳美のことについて最初に話したことがだいたいだと絵里は言った。
ただし最初に私に話した内容は、ここで語られずまた後で話されたことも含まれているという。

「もう少し詳しい話はまた後から聞いたの。」

その後で、いつのことなのか気になったし、どこまでがこのような状況で話され、どの部分が後のどのような状況で話されたのか気になったが、その切り分けを明確に絵里から引き出すことはできなかった。
絵里自身も、どの時点で何をどこまで聞いたか、ごっちゃになって曖昧だと答えた。

同意書については、「それはよし美から望んでいることなんです。」という単純な答しかこの時点では返ってこなかったという。

佳美以外のことについての小野寺のプレイベートのことについても話されたように、私は直感したが、それについては、明確に答えてくれず、後の会話の内容といっしょに情報を伝えてくれることにどどまった。

この日起ったことについての、絵里のすでに私に対して積み重ねられた多くの言葉にもかかわらず、この部分の会話、その内容というよりも、全体的な方向性をを正確に捉えられないことは、私に一種の掻痒感を与えた。
絵里が最初の話の内容にあったように佳美のことについての会話は、必然的に小野寺のプライベートな状況についての話題に及ぶだろう。
そしてそれは絵里と小野寺二人の関係の定義にについて当事者の間での自己認識の問題にも及んだというのは、これも絵里が話したとおりだ。
二人の間でどのような言葉が積み重ねられたいったのか…。

性的な充足そして、「一件落着」の後のゆったりした雰囲気はそうした会話に一定のニュアンスを与えたに違いない。
それを私はどうしても捉えることができなかった。
最初のプレイの後の語りのときに感じた曖昧な部分が戻ってきてると感じた。

一方、絵里の記憶の再生の焦点はむしろその会話の部分にななく、その後に続いて起ったことにかかわる部分にあり、話はそちらへと移っていった。
そしてそれはもっともなこととは言えた。