154. 消費

投稿者: ゆきお

絵里からの語りのメールのタイミングは意外というか、軽いショックを与えるものだった。
帰宅時間についての日常の連絡と一緒のメールに書かれている点に不意を打たれた。
ビジネスホテルでの一連の行為についも、絵里は口で言い難い部分をこれまで何度かメールで書いてきていたが、そのためのメールで行ない、日常の他の連絡とは分けていた。
また通常は就業時間後に特別にとられた時間に書かれていた。
その日のメールは、送信時間から見て、昼休みに書かれたものに違いなかったが、それにしても仕事の日常の延長の時間の中で、こうしたものを書いているという大胆さに驚いた。

絵里に後でそのことについて言うと、「夕方とれる時間が今週もなさそうで、急いでまとめて書いちゃったのよ。」とこともなげに返された。

また、書かれた内容、というより、文体に今まで違った印象を受けた。
全体的に言うと事実的なことには今までと比べ何かが大きく省略されているという感じはなかったし、部分によってはより赤裸々であった。

が、調子がこれまでのものとは微妙に違っていると感じた。
今までの告白は、一気にに全体が書かれるというより、事実の簡単な骨格のあとに、私とのやりとりの間で、彼女なりの物語が紡がれていくというもので、部分的に詳しかったり、彼女の思いを、また場合によっては、小野寺とのやりとりを中心に綴られたりしていて、それぞれの事柄についてのその時々の関心のありかたが伝わってきていた。
今回は、全体を一気に描くために、項目を箇条書き的に並べていったような印象を受けた。

そのことについてもう絵里にコメントしなかった。
日常の連絡のメールに書いてきたことの理由についての答えを聞けば、やはり、「忙しくて、時間がなかったから」と言うだろうことは明かだった。

「この辺で許してください」…私には、レポートとしてはこの辺で一件終了ですから、それで満足して解放してください、というニュアンスに読めた。
ある程度の全体を一気に書き切ったのも、今までと違い、もうこれ以上は入り込ませないためではないかと感じられた。

そして、書かれた事と絵里が体験したことの重なりあいのぶれが私の中で大きくなってきた。
何かが足りないという気はしていたが、その中で足りないものが何なのかもう分からなくなっていた。、
逆に言葉少ないながら、そこには過剰なものがあるような気もした。
赤裸々で扇情的な部分、むしろ、私を刺激する勘所を押さえたサービスなのか。
あるいはもしかして自分をも刺激しようとして記述されたものなのか。

そうした漠然とした違和感にもかかわらず、書かれた内容は、私の想像力を強く刺激し、興奮させた。
佳美という女の映像を見たことにより、絵里の言葉と私の関わりあいに変化が生じていた。
喚起された頭の中の映像は、私を今までよりた易く性的興奮へと押し遣やった。
私は、言葉の意思疎通についての複雑な気持を抱く傍らで、絵里の言葉が直接的な映像に変換されたものを自慰ともに安易に消費した。
その日の午後だけでなく、それに続く日々も。