168. 再現

投稿者: ゆきお

これ以上思い悩んでもしょうがないといいきかせ、昨夜の前菜に作った魚介のマリネをソースにしたパスタで遅い昼食をとり、ともかくも無理矢理に仕事にかかった。

思いのほか専念でき、一段落すると7時を過ぎていた。

冷凍のピザとワインで、簡単に食事した。

夜はまだ長い。

稼ぐほうのでないアカデミックな翻訳に関係する調べものを始め、没頭した。
こちらのほうで絵里の期待に応えたい。
と思うと同時に、実は絵里との食事がないほうが、この方面は進むのかもしれないとちらりと思った。

10時をとうに回りに一段落したところで、ビーフジャーキーをつまみにバーボンを飲みはじめた。
ニュース、テレビというものをもう長いこと見ていない私には縁遠い芸能ゴシップを適当に見ていく。

あとは寝るだけだ。
そう思ったときに、鋭い性欲が起きた。
ネットサーフィンで思いものままに何か性的なものを探しにでもいこうかと思ったと同時くらいに、メールの着信があった。

絵里のPCからだ。

サブジェクトもなく一言
> リンクを送ると提案されましたが、どうしますか。
と書かれていた。

前回の痛い思い出とともに、前回のことはできるだけ思い出さないようにしていたので、意外な繰り返しだった。
が、心の片隅で期待していなかったとすれば嘘になる。

受託すれば良からぬことになるのではないか。
しばらく迷った。
が、好奇心には勝てない。

> OK

とだけ返事した。

数分後に、折り返しでやはり、サブジェクトもなくRe だけになったメールが来て

一行だけリンクが書いてあった。

URLの前半にはおぼえがあった。

追うようにして、前回のようにパスワードがきた。

1行だけのメールの末尾についていた、

> PS. メール、今日はこおれでおしまいね。

というくだりは、もうこれ以上連絡してくれるな、ということだろうと読めた。

URLのはドメインの文字列には見た覚えがあり、前と同じものだと思った。
クリックする。
「Y美の記録」という同じページ。

前回のほぼ忠実な再現だ。

ログインした。

写真のサムネールが6枚。
拡大したてみると、見覚えのある佳美の姿だった。
顔は髪の毛や目隠しではっきりそれとは分からないようになっているが、前回の印象から明かだった。
シーンとポーズは前回に似たものがあった、ボンデージスーツ姿で吊られ、胸にはクリップと鈴。
それが複数の角度と状態で写されていた。
どれも美しい…。
1回のプレイの断片らしかった。

動画のサムネイルが1つあった。
こちらは、別の機会にとられたもののようでもあった。
全裸に赤い首輪だけで、吊られてた。
口には同じく赤い猿轡。
そして、胸といい腹といい点々と赤い蝋燭のしずくの固まったものがついていた。
中断してショットが切り変った。
女の身体を背後から固定して写している。
背中や尻にも赤い蝋燭のあと。
視野にはいっていないところから、乗馬鞭が飛んできた。

パシンという鋭い音に、女のくぐもったような呻き声。
両手を吊らたまま、身体がゆらぐ。
時には一定のリズムで連続して、そしてあるときは断続的、不規則に鞭が当てられ、次々と蝋燭の後が剥されていった。
背中、尻、大腿。
鞭のあたる先は、次第にあるいは突然場所を変えながら、蝋燭に覆われた全域をめぐっていく。
5分ほどたち、ほぼ蝋燭が剥されるかというところで動画は突然終った。

それ自体、刺激的なものである。
これと同じものが絵里に再現されていることは、もう前回の状況について知識から明かだった。
すでにもう絵里に起きたことを再現するような画像なのか。
それともこれからなのか。
いや、まさに、今それが進行しているのか。
前回小野寺が仕組んだタイミングからは大いにあり得ることだった。
胸が掻き毟られる思いがする。

それと同時に、前回に比べて画像の量が圧倒的に少ないと思った。
そのことで物足りないような思いがし、ページの下のほうを見ると、目立たないように右下隅に1、2という文字があり、下線からリンクだろうと想像できた。